三瀬夏之介 ゆらぐ絵画
─潜行、氾濫、上昇、斜行、迂回─
三瀬夏之介(1973年、奈良生まれ)は、既存の日本画の枠にとらわれない、多様なモチーフや素材、技法による圧倒的な表現力が高く評価されている画家です。2009年に東北芸術工科大学に着任して以降、東北・山形の風土に地理学的・民俗学的なアプローチによって向き合い、岩絵具や和紙(雲肌麻紙)などの日本画の素材を用いながらも、従来の絵画の形式を超えた、空間を覆う緞帳のような巨大な作品を制作しています。
本展では、三瀬夏之介の近作を中心に、作家が関わる地域プロジェクトなどを、山形美術館が収蔵するコレクションと共に紹介します。場所の歴史や記憶と不可分に描くことの根源を見据える圧倒的な表現から、山形の歴史性や新しい風景を考えるきっかけとします。
三瀬夏之介 ゆらぐ絵画 ポスター/チラシ(PDFファイル, 2.9MB)
【展覧会構成】
「コラボレーションゾーン」
三瀬夏之介、山形美術館コレクション
「ラボラトリーゾーン」
現代山形考 ─新しい郷土史をつくる─(「修復は可能か?」「藻が湖伝説」「山はうたう」)、現代風神雷神考、山形美術館コレクション
「コレクティブゾーン」
東北画は可能か?、ルネサンス絵画研究会、歩火、紅花道中プロジェクト、山形美術館コレクション
【ことば】
三瀬夏之介
僕の絵は壊せるんです。いつでも再構成できて、始まりもないし終わりもない。(三瀬夏之介×草薙奈津子(元平塚市美術館館長)「『日本の絵』のための対談」)
三瀬夏之介
「日本の絵」とは、「日本」の自画像であり「私」の自画像でもある。/宗教が過ちを犯し、大地が大きく揺れ動いた1995年、私はまだ22歳だった。/それまで、自身をぼんやりと包んでいた安心感と先行きのわからない不安感という相反するものが、初めて切実に問われた瞬間でもあった。/大きな存在を信じたいが、そんなものはもう何処にも見当たらない。/しかし、何も信じるものなく歩む人生は恐くて想像もできない。/2011年、忘れかけていたその問いに、東北の地で再びぶつかることになろうとは夢にも思わなかった。(三瀬夏之介『三瀬夏之介 日本の絵』青幻舎、2013年)
三瀬夏之介
僕個人としても、東北で描いたものを東北で発表するということはひとつの方法としてあると思うのですが、それを東京で、さらには世界でと考えたときに、どういう通訳の仕方があるのかなと思います。僕がやりたいもの、やっていかなくてはいけないと思っているもの、その出力の仕方がこれからの問題なのかなと。どこでつくり、誰に見せていくのか。どこで感じ、どんな空気を吸うのか。(三瀬夏之介×草薙奈津子(元平塚市美術館館長)「『日本の絵』のための対談」)
今泉篤男
アイルランド文学が英文学の骨格になっているように、山形の絵が日本の絵の或る一つの骨になってもいいのだ、東京の人々は故郷をもっと愛すべきだし、地方の人は、土地への愛情を深めることだ。(1954年9月25日山形新聞「県美展を観る 今泉篤男 対談 河北倫明 中央画壇の縮図 郷土色が乏しい 地方美術界よ自信を持て」)
真壁仁
こんどの綜合美術展の日本画、洋画、彫刻に亘る全作品を通じて風土と気候を同じくするわが郷土美術家の精神に何等かの統一をみることが出来るだらうかと自分は考へてみた。それは必ずしも画題の上に現れ得る郷土の資料に関はりを求めなくともいい。仮りに今それを北方性と名づけるならば、さういふ広い意味に於て拙劣な表現をとるときに、鈍重となり低迷となりマンネリズムとなり、すぐれた表現を得ては、健実なリアリテイを生む結果となるところの素質である。さうした素質をはたして自分はこの展覧会からつかむことが出来、そして半分の喜びと哀しみとを与えられた。(雁戸太郎「縣美術綜合展印象記」(上)1935年10月6日付日刊山形)
会期 | 2024年11月1日(金)─17日(日) |
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開館時間 | 午前10:00〜午後5:00(入館は午後4:30まで) |
休館日 | 11/5(火)、11/11(月) |
入館料 | 一般1,000円、高大生600円、小中生400円 ※20名以上の団体は各2割引 ※土曜日と日曜日の午前は中学生以下無料 ※障がい者手帳をご提示の方と付添者1名の観覧料は半額 ※山形美術館キャンパスメンバーズ制度登録校の学生は学生証提示により無料 |
主催 | 山形新聞、山形放送、山形美術館 |
共催 | 山形県、公益財団法人山形県生涯学習文化財団 |
後援 | 山形市 |
特別協力 | 高橋龍太郎コレクション |
協力 | イムラアートギャラリー、東北芸術工科大学 |
お問い合わせ | 山形美術館 990-0046 山形市大手町1-63 電話:023-622-3090 ファックス:023-622-3145 |
三瀬夏之介《千歳》2009
三瀬夏之介《ぼくの神さま》2013
三瀬夏之介《山形の絵》2016
三瀬夏之介《日本の絵─執拗低音─日本列島》2017
三瀬夏之介《日本の絵─らせん》2020
三瀬夏之介《日本の絵─風に吹かれて》2023
真下慶治《最上川浅春》1944年
加藤松渓《首夏》1942年
鈴木蘭涯《駿河北山所見(富士山真景図)》
高橋源吉《臥龍橋》1902年
高嶋祥光《シシ踊り》1965年頃
菅野矢一《蔵王山銀》制作年不詳
高橋由一『山形県景観画集』(1884年)より《常盤橋》
前田春治《蔵王熊野岳とお釜》1975年
近岡善次郎《雪の済生館》1984年
斎藤長三《雪(市井風景)》1940年
高嶋祥光《みの里乃秋》1951年
近岡善次郎《赤ちゃん誕生》1955年
小松均《最上川長井付近その1》1970年
椿貞雄《春夏秋冬極楽図》1949年
関連イベント
【ギャラリーツアー ①】
日時:2024/11/1(金)13:00-14:30
会場:2階展示室(時間までにお集まりください)
登壇:三瀬夏之介(本展展示作家)、岡部信幸(山形美術館学芸員)
※定員40名程度
※要観覧券、申し込み不要
【トークイベント ①】
日時:2024/11/2(土)13:00-14:30
会場:2階展示室(時間までにお集まりください)
登壇:柳沢秀行([公財]大原芸術財団 財団本部シニアアドバイザー)、三瀬夏之介(本展展示作家)
※定員30名程度
※要観覧券、申し込み不要
【ワークショップ】
日時:2024/11/3(日)午前の部11 :00~、午後の部13:30~
登壇:大山るり子(紅花染め指導者)、東脇佳菜(東北芸術工科大学大学院生)
紅花染め指導者の大山るり子さんと、「紅花道中プロジェクト」を主催している東脇佳菜さんによるワークショップです。絞りを入れたり、割り箸で線を入れたりするオリジナルの色鮮やかな紅花染のハンカチ作りを体験できます。
※各回60分程度
※定員10名
※要観覧券、要申込(山形美術館までお電話ください 023-622-3090)。
【トークイベント ②】
日時:2024/11/9(土)13:00-14:30
会場:2階展示室(時間までにお集まりください)
登壇:三瀬夏之介(本展展示作家)、岡部信幸(山形美術館学芸員)
※定員30名程度
※要観覧券、申し込み不要
【ギャラリーツアー ②】
日時:2024/11/16(土)13:00-14:30
会場:2階展示室(時間までにお集まりください)
登壇:コレクティブゾーン出品作家、岡部信幸(山形美術館学芸員)
※定員40名程度
※要観覧券、申し込み不要